舞台共演、一年越しの恋

20代、僕は都内で演劇活動を行なっていました。
学校卒業後、仲間と劇団を立ち上げ鳴かず飛ばずでしたが、毎日が楽しく、キラキラしていた。

劇団を立ち上げ順調に公演劇場を大きくしていき、自分としてもだんだんと顔が広くなってきた時に知り合いから別の団体の舞台公演の出演オファーがきた。
自分としてはすごい嬉しかったし、やる気もバリバリだったので勿論オファーを受けた。

しばらくして公演メンバーとの初顔合わせがあった。
そこが彼女との初めての出会いでした。
最初の印象は”無し”。

メンバーは大体10人ほどいたと思うが、やはり皆役者をしている人たちばかりのため個性が強く。
見た目がすごい人、声が特徴的な人、台本の読み方が上手い人、漢字が読めずに何度も台本でつっかかる人などいまだに思い出せるが、当時の彼女の印象はまるで思い出せない。

特段目立った格好もしてなければ、変な癖もない。
一つあげるとすれば、普通に美人くらい。
ゆえに彼女はこの舞台の主役だった。

彼女と仲良くなったきっかけは帰りが同じ電車だった事
僕も都内から遠い方だったが彼女は僕よりもっと遠い駅だった。
稽古のたびに同じ電車で帰り、僕が先に降り彼女はそのまま帰って行った。

最初の頃は、全く意識などしていなかった。
というのも、僕にも彼女にもパートナーがいたからだ。
電車の中でお互いの馴れ初めや相手の嫌なところなどの話をして盛り上がっていた。

最初は印象などほぼ無かったが、話をしていくうちにどんどん彼女に惹かれていった。
中でも彼女の役者としての在り方が僕の心を掴んでいた。
主役として舞台に臨んでいた彼女は誰よりも台詞が多いのにも関わらず誰よりも覚えていて誰よりもミスが少なかったのだ。

気がつくと。役者としての憧れがいつしか僕の中で恋愛感情に変わっていた。

舞台が始まり、無事公演が終了した。
千秋楽が終わり、そのまま皆で朝まで打ち上げをして解散をした。

朝の始発、最後に二人同じ電車に乗る。
僕は空の下り電車の中で思いを伝えた。

返ってきた返事は「タイプじゃない。」

あっけなく散った。
まあよくよく考えてみたら二人とも相手がいるし僕も気分が上がって言ってしまったがこれで良かったのだ。

そう思い、彼女のことは忘れることにした。

それから一年後、僕は付き合っていた彼女と別れ劇団で活動を続けていた。
僕の劇団で舞台を打つことになり
キャストを集めなければならなくなった

僕の役は恋人がいる役でその恋人を募集することになった。
演出家が僕が惚れれる子がいいとふざけ半分に言ったところ

一年前の僕の恋を知っている仲間が彼女の事を口に出した。

その流れで彼女にオファーを出すことになり、あんな事があって承諾される訳がないと思っていたにも関わらずOKの返事がきた。

1年ぶりに会った彼女は変わらず綺麗で役者に対する気持ちも変わらずとても魅力的だった。彼氏とはもう別れていた。

稽古がスタートして、お互いに愛し合う役だった事もあり1年前と変わらずに話をし、時には役者論でぶつかり本番を迎えた。

本番が始まる前に、なぜオファーを受けてくれたのかを聞いた。
すると彼女は、恋人の相手が僕だから受けたと言ってくれた。
すごく嬉しかったが、言葉の真意はわからなかった。
何故なら、役の間はものすごく愛し合うが、稽古が終われば特に相手から何かあるわけでもないただの友人の関係だったからだ。

役の間は愛し合える。役が終わるとただの役者仲間。
僕の中で、様々な感情が溢れていた。

舞台が終わる頃には、僕の中でまた気持ちが抑えきれない所まできていた。
千秋楽が終わり、打ち上げの後に
もう一度、最後のチャンスと思い告白をした。

それから数年、僕と彼女は役者を辞めそれぞれ就職をして
結婚をして、子供に恵まれた。
初めて会った時にフラれてなければ、役が恋人でなければ。
色んな偶然によって今があると思うと、人生は本当に何があるかわからない。